記念すべき第一回はちょっと旬を過ぎてしまいましたがフィラリア予防について
日々の診察で感じたことを書いてみようかなと思います。
フィラリア・フェラリア・マラリアいろんな呼び方をされてしまったりするものの
ペット(この場合主にイヌですが)の予防措置としては、恐らく狂犬病に次いでメジャーな予防です
マイシャ動物病院がある地域でもワクチン???って方でもこの予防はされている方多いです。
これだけメジャーなフィラリア予防ですがどうやら正しくその意味を理解して実施している方は
残念ながらそれほど多くはないようです。

実際に直面することが最も多い間違いは
「フィラリアって半年飲ませればいいんでしょ」
これです。これが非常に多い。
さらに結構いらっしゃるのが
「ウチはフィラリア怖いので3月から半年飲ませてます」
まずココではっきり言っておきましょう
半年では足りません!
3月から飲ませるのは意味ありません!(意味のある地域もありますが・・・)
この間違いの根本的な原因はフィラリア予防。この「予防」と言う言葉に問題があります
「予防」と言うとワクチンのように免疫を作って病気に罹らないようにすることをイメージしますが
実のところフィラリア予防はやっていることは「駆虫」(虫下し)です!
投薬によってそれより以前に体に侵入したフィラリアを血管に入る前に殺してしまうのです
つまりフィラリアが感染する(フィラリアを持った蚊に刺される)前から飲ませても意味無いのです
では、いつからいつまでが感染期間なのかということなのですが、ざっくりに言えば蚊が出始めて一ヵ月後から
蚊がいなくなって一ヶ月後までです。
細かいことを言うならば下記のHDUにより導き出される期間予防をすればよいのですがHDUを求める際に
使用するデータ自体あまり細かい地域的なものは反映されていないのであくまで目安にしかならないのです
難しい話になってしまうのですが日本犬糸状虫症研究会;犬フィラリア症予防普及会が提唱している
HDU(Heartworm Development heat Unit)と言う概念があります
あくまでフィラリアの感染期間を知るためのひとつの考え方で、その予防期間を限定するものではありませんが
犬フィラリア症の感染子虫が、蚊の体内で発育するには、ある程度気温が上昇した状況が続くことが必要なことより
感染可能期間を知る方法です(あくまで指標のひとつではありますが・・・)
つまり予防期間はこの感染可能期間の最初と最後を一ヶ月後ろにずらした期間になります
過去7年間の大阪府の感染可能期間は下記のようになっています
1997年 5/13〜10/31
1998年 4/29〜11/13
1999年 5/12〜11/9
2000年 5/13〜11/10
2001年 5/10〜11/7
2002年 5/ 5〜11/3
2003年 5/ 7〜11/8

過去7年間の平均
5/ 9〜11/7

つまりこのデータからいくと少なくとも6月初旬から12月初旬までの7回の投与が最低限必要なことが分かります
つまり、半年投与すれば大丈夫と思っているのは非常に危険な考え方(感染してしまう可能性がある)
ということになります
フィラリアというまさに予防に勝る治療が無い疾病がメジャーになりその予防をしなくてはいけない
という知識が広まり予防を実施する人が増えたことは、獣医師の諸先輩方の啓蒙活動の成果であることは
間違いないのと同様、その正しい意味を理解していない人が多いのもまた我々獣医師の責任です。
実際詳細に説明すると非常に時間がかかってしまうので日常の診療で100%の説明と言うのは
なかなか難しいことです(非常に難解になってしまいますし)
しかし、この取り返しがつかない大きな誤解を少しでも減らすことに結構燃えている院長なのでした

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